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顧客行動の多様化が進むなかで、オムニチャネルを実践する企業は年々増加傾向にあります。
いかに顧客との接点にバリエーションを持たせ、なおかつ管理しやすい仕組みを構築するかは、今にはじまった課題、命題では無いにせよ、時代と技術の変遷と試行錯誤の末、“オムニチャネル”という一つの最適解がここ数年で浸透してきた印象です。
本記事では、オムニチャネルについて(漠然と気になっている方含めた)初心者にも分かりやすいよう、基本概要から応用するのに参考にしたい事例紹介まで幅広く網羅的に解説します。意味はもちろん、注目される背景、主な戦略、(オムニチャネル化がもたらす)メリット等々、加えてコールセンターの現場における必要性などにも言及。
ぜひ理解を深め、導入の足掛かりにしてください。
昨今、積極的に活用する企業が続々と現れ話題に上ることも多いため、“オムニチャネル”の言葉を見聞きする機会は、以前よりも格段に増えてきているように思います。
しかし、皆が一様にはっきりとその意味や定義をご存知であるかというと、いささか懐疑的です。おそらく、類似ワードを一緒くたに捉えている方も一定数いらっしゃるでしょう。
そこでまずは、確実におさえておきたいオムニチャネルの基本的な部分をお伝えします。
オムニチャネルの言葉を構成する要素はオムニ(=あらゆる)とチャネル(=経路)です。文字通りあらゆる経路を指し、販売活動のために消費者と接点を持つ場所あるいは手段がさまざまであることを意味します。(各チャネルが)連携し、統合し、総合的に顧客を作っていくやり方がまさにオムニチャネルの定義です。すなわち、(企業と顧客の)タッチポイントすべてが販促のアプローチになり得ます。
店頭での呼び込み、テレアポ、サイト運用、メールマガジン、SNS……等々、集客ひいては購買行動につながるチャネルはいずれもオムニチャネルの対象です。
顧客接点を構築するアプローチは決してオムニチャネルだけではありません。なかにはつい同じものと捉えられがちな戦略も存在します。典型的なものは以下の通りです。
それぞれの用語について区別できる特徴を知れば、オムニチャネルに対する認識はより深まるでしょう。
マルチチャネルとは、オムニチャネル同様、顧客接点を増やすために複数のチャネルを用意することです。ただし、各チャネルは独立しています。商品の売り上げアップに向けて、それぞれが分断された状態でアプローチすることになります。
クロスチャネルでは、マルチチャネルにて用意された販売経路の連動、横断が可能になります。お察しの通り、オムニチャネルに近い概念です。が、顧客情報の一元化については範疇から外れます。
O2Oとは、正式名称の“Online to Offline”が示す通り、オンラインからオフラインへ送客するためのインターネットを起点とした手法です。そのため、いわゆる「誘導」の役割を担うものとして位置づけられています。対して、オムニチャネルは「囲い込み」です。
また、オンラインとオフラインのチャネルが区別されているか否かも両者(O2Oとオムニチャネル)の大きな違いとして挙げられます。
OMOは、Online Merges Offlineの略称です。起点こそオンラインですが、オフラインが融合された状態で顧客へアプローチしていきます。
各タッチポイントから得られる情報など、デジタルデータを用いて(顧客にとっての)最適な体験や価値を提供する考え方です。基本的にO2Oと同じく「誘導」の役割を担います。
オムニチャネルが注目される背景には、間違いなくスマートフォンとSNSの普及があります。
実店舗で商品の素材や質感を確認し、購入自体はインターネット上の通販で行うといった消費者の行動、すなわち「ショールーミング化」の加速を後押ししたのは、スマートフォンの台頭といっても過言ではないでしょう。何しろスマートフォンがあれば、商品の検討から購入まで一連の流れすべてを(それ一台で)済ますことが可能です。同時に、今日、SNSを活用される方が非常に多くいらっしゃいます。値段の比較や品質の評判などを探り(あるいはたまたま情報が視界に入り)、興味・関心を持つようになるケース、パターンは日常茶飯事といってもいいかもしれません。実際の店舗の様子やECサイトを覗こうと思えるのも、あらゆる導線が広がっているスマホ&SNS文化が大いに作用しているはずです。それゆえ、チャネルの多様化を促進する風潮もうなずけます。
販売チャネルを一つに絞る戦略では、今の時代、機会損失は必至です。
したがって、いつ購買意欲が高まってもいいように、(商品購入の)タイミングを逃さない仕組み作り、まさにオムニチャネル化が求められています。加えて、データ管理におけるテクノロジーの進化もまた、オムニチャネルの認知度向上に一役買っているでしょう。(データの精度がアップし)顧客行動をまとめて把握しやすくなった分、オムニチャネルが推奨される機会の増加は必然だと考えます。
オムニチャネルをスムーズに実現するには、準備、戦略が欠かせません。
商品やサービス購入につながる経路の確認や、在庫や顧客情報を一元管理する体制構築などあらかじめ対応したうえで、仮説や目的を立て具体的な施策を揃えていく必要があります。いうなれば成果へと導く大事なプロセスです。以下、主なポイントを挙げます。
オムニチャネルをいざ実行するにあたり、用意すべきチャネルの導入状況の確認を踏まえて、いつ、誰が、何をすべきか決めておくことは非常に大切です。この作業は俗にいうロードマップの策定に当たります。オムニチャネルの性質上、あらゆる販売経路が複雑に入り組んでくる可能性もあるため、各自曖昧なままプロジェクトを進めてしまえば、うまく回らなくなるリスクは高いです。顧客情報の収集・管理、アプローチ手法、商品デザイン作成、ディレクション(進行リーダーによる指揮)……等々、実施内容に加え関係者内での役割分担まで明瞭に行いましょう。
オムニチャネルでは、“どの販売経路から商品の売り上げにつなげるか”ではなく、あくまで顧客の購買行動を総合的に捉え“どうやって商品を買ってもらうか”に重点を置きます。そのため、個々のチャネルで囲い込みを行ってしまっては、ユーザー、消費者を戸惑わせるかもしれません。いいかえるならば、すべてのチャネルでブランドイメージを統合し、一貫性を持たすことが、オムニチャネルの特徴を生かすためには必要です。
顧客体験のシミュレーションから仮説を立てることも大事です。
作業としては、顧客の人物像(ペルソナ)を決め、行動に行き着くまでの思考、感情を分析し、認知、検討、購入、利用へ至るシナリオを時系列で捉え可視化します。そう、カスタマージャーニーの設計です。
思惑通りに彼、彼女らは動いたかどうか。現実との乖離もしっかり見比べなければなりません。電話によるコミュニケーション、イベント開催、来店、DM、Email、Webサイト、バナー広告、ブログ、SNS、動画、(スマホ)アプリケーション、プッシュ通知、iBeacon……等々挙げればキリがないなか、可能性が無尽蔵に広がるオムニチャネルでは、あらゆるタッチポイントで提供したい体験を想定することが、戦略上欠かせないといえます。
オムニチャネルは、販売経路すべてで顧客情報やECサイトでの商品閲覧履歴、購入実績といったデータを一元化します。顧客対応を行うにあたってそれらは、各チャネル担当者が同様に参照できるとよりスムーズです。したがって、商品そのものや在庫情報、ポイントプログラムなどは統合し、統一された接客を目指すようにしましょう。
オムニチャネルを導入することでいくつかメリットが期待できます。
具体的には以下の通りです。
ある商品を店舗で見かけて気になった方が、必ずしもそのお店でその商品を購入するとは限りません。後日インターネットで検索した際、同じ商品を扱う他店運営のECサイトがヒットすれば、そこで買う可能性は十分にあり得ます。興味・関心を与えただけで売り上げにはつながらなかった店舗からすると、これは機会損失です。こうした勿体ない事態を招かないようにするためには、店舗から自社のECサイトへスムーズに導線を作っていくなど、複数のチャネルとの効率的な連携が必要でしょう。加えて、各チャネルで最適なアプローチをかけられるようユーザー、消費者の傾向を把握しておくことも大事です。
オムニチャネルでは、商品の購入を検討している顧客のデータを全体的な視点で管理できます。まさしく、上述したような惜しい離脱を減らせる期待が持てる仕組みです。
オムニチャネルでは、顧客理解が深まる傾向にあります。というのも、チャネルをシームレスにつなげられるからです。オンラインとオフラインの両方で行動ログ、データを収集できるため、総合的な分析や検証にも役立ちます。
顧客が求めているタイミングで適切なアプローチを打てるオムニチャネルは、シンプルに効率的で、(顧客にとっても)快適なシステムでしょう。顧客体験の向上はそのまま顧客満足度につながりやすく、自社商品やサービスに対するイメージが一段と良くなっていくことも大いに期待できます。
メリット尽くしのように思えるオムニチャネルにも注意点は存在します。
そうとは知らずに(オムニチャネルは)無条件に成功するものだと誤解し、気を付けるべきポイントへの目配りを怠った場合、おそらくいざ実行してから“うまくいかない”と嘆く羽目になるでしょう。
注意点こそ確実におさえておかなければなりません。以下、具体的に取り上げます。
オムニチャネルによって効果を得るまでには、商品認知のためのブランディングや検証、改善の繰り返しといった地道な作業が必要です。そのため、ある程度時間が掛かるものだと認識しておいた方がいいでしょう。予算やリソースの管理も思いの外大変です。
イメージしていた結果へとこぎ着けるためには、どうしても試行錯誤が欠かせません。
オムニチャネルは、複数のチャネルを用意しなければならないため、当然、初期費用の負担は大きくなります。また、すでに独立しているチャネルを連携させるためのシステム開発やデータベース管理に発生するコストについても、しっかり念頭に置く必要があるでしょう。
店舗誘導のための広告施策、IT環境の整備といった局所的な用途でオムニチャネル化を図るならば、それはおすすめしません。オンラインとオフラインはシームレスに扱います。目指すべきは全体最適、そして相互送客です。したがって、すべてのチャネルでサポートは連携させるようにしましょう。
業種問わずさまざまな企業がすでにオムニチャネルに取り組んでいます。
以下、主な先進事例です。
無印良品がリリースしているオムニチャネル専用のスマートフォンアプリ「MUJI passport」をご存知でしょうか。このアプリは、ニュース配信や在庫検索など複数の機能が搭載されています。なかでも出色は、マイレージ型のポイントプログラムです。お買い物やサービス利用といった条件を満たす度にマイルがたまっていきます。場所やイベント、時間帯に応じてはクーポンなどお得な情報も届き、諸々チャネルを横断し還元される仕組みです。
家具販売で有名なニトリでは、インターネット上の通販で購入した商品を実店舗で受け取ることができます。在宅時間が曖昧な場合などに好都合なサービスです。まさしくオムニチャネルが目指す快適な顧客体験を提供しているといえます。
健康食品・化粧品の通信販売を手掛けるファンケルでは、オムニチャネル化が顕著です。サイトリニューアル後、店舗とWeb、電話窓口の情報を統合したかと思えば、会員向けのアプリを立ち上げ、クーポンの発行や適切なレコメンド情報を定期的に発信するなど、積極的に拡大しています。アクセスログを基に購買行動を大局的に把握されているからか、各チャネルで効果的な施策を打てているのでしょう。今後の動きにも注目です。
コールセンターにおけるオムニチャネルは、ここまでお伝えしてきたものとはやや意味合いが異なります。なぜなら、チャネル自体の定義が別だからです。コールセンターの場合、チャネルを“販売経路”ではなく、“コミュニケーション手段”と捉えます。
一方で、根底の考え方は変わりません。
年々、顧客とのまさしくコミュニケーション手段が柔軟かつ広がりを見せるなか、コールセンターの現場では電話以外にもEmail、FAX、チャットボット、SNS……等々あらゆる媒体を取り扱うことが必須です。オムニチャネル化を図るならば、それらは当然横断させて提供します。目指す先はチャネル間のシナジー創出や顧客満足度の向上です。
また、そうしたミッションをクリアするには適宜、ツールやシステムの導入が欠かせません。CRMやCTI、IVR、FAQコンテンツなど見直し含めて対応が求められます。
あれこれコールセンターでオムニチャネル化が進むと、たとえば最初のチャネルでの問い合わせ内容や取得データが以降も(他のチャネルでも)引き継がれるため、顧客側に余計なストレスを与えずに済み、他方、企業側にしてもスタッフの労力軽減の期待が持てます。両者にとって快適な体験となれば、チャネル全体が“コミュニケーション手段”の領域を超えて本来位置づけられる“販売経路”にも作用し、サービスの売り上げ、発展へとつながるでしょう。
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