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2025年、警察署などの実在する電話番号を着信画面に表示させる詐欺電話が相次ぎました。同年11月、警察庁は、2〜3月に国内の通信事業者のIP電話回線がシステムの設定誤りによって悪用され、警察署などを装った電話が約197万件かけられていたと発表しました。
着信画面に表示される番号は、多くの人が「誰からの電話か」を判断する手がかりです。その番号が偽られると、受け手には見分けがつきません。このコラムでは、発信者番号の表示についての法令と業界のルール、転送時の注意点、電話サービスを選ぶときの確認ポイントを解説します。
発信者番号はどのように表示されるのか
電話をかけると、発信側の通信事業者が「この電話はこの番号からかけられた」という情報を、通話と一緒に送ります。これが発信者番号です。中継する事業者と着信側の事業者はその情報を受け取り、相手の電話機に表示します。
つまり、表示される番号が正しいかどうかは、最初に番号を送り出す発信側の事業者に大きく左右されます。発信側の確認が甘いと、利用者が入力した番号がそのまま相手に届いてしまいます。2025年の事件も、発信側の設定に原因があったと報じられています。
確認する事業者
- 利用者が「警察署の番号」を入力して発信
- 割り当てた番号と違うことに気づく
- その番号は送らない
なりすましは届かない
確認しない事業者
- 利用者が「警察署の番号」を入力して発信
- 確認せずにそのまま送る
- 受ける人の画面に警察署の番号が出る
受ける人は見分けられない
クラウドPBXやIP電話では、主にSIPという通信プロトコルを使って通話を制御しています。発信者番号もSIPで送られる情報の一つですが、送られてきた番号が正しい番号とは限りません。そのため、通信事業者が発信者番号を適切に確認し、不正な番号が通知されないようにすることが重要です。
発信者番号についての法令と業界のルール
この記事では、事業用電気通信設備規則などの法令、総務省の取扱い方針、TCAのガイドラインについて、2026年10月24日時点の内容を紹介しています。これらは改正されることがあるため、必ず、e-Gov法令検索や総務省、電気通信事業者協会(TCA)の公開資料で最新の内容をご確認ください。
発信者番号の偽装を防ぐため、法令を基本として、総務省の取扱い方針や業界団体のガイドラインで具体的なルールが定められています。
事業用電気通信設備規則(総務省令)
音声の電話サービスを提供する通信事業者は、事業用電気通信設備規則で、利用者に割り当てた番号と異なる番号を相手に送らないよう、必要な措置をとることが求められています。ただし、受け手が発信元を誤認するおそれがない場合は例外とされています。
電気通信事業者は、当該電気通信事業者が利用者に付与した電気通信番号について、当該利用者の発信に係る電気通信番号と異なる電気通信番号を端末設備等又は他の電気通信事業者に送信することがないよう必要な措置を講じなければならない。ただし、他の利用者に対し、発信元を誤認させるおそれがない場合は、この限りでない。
事業用電気通信設備規則 第35条の2の6(異なる電気通信番号の送信の防止)
総務省の取扱い方針(2008年)
どのような場合が「発信元を誤認するおそれがない場合」にあたるかは、総務省が2008年4月21日に公表した取扱い方針(2019年5月22日改定)で示されています。あてはまるのは、代表番号を通知する場合、0120などの着信課金番号を通知する場合、そしてそれ以外のサービスで、番号の持つ役割(地理的識別、品質識別、サービス形態の識別、社会的信頼性の識別)の面から発信元を誤認させない措置がとられている場合です。
いずれの場合も、通知された番号にかけ直すと発信元に着信することが確保されている必要があります。TCAのガイドラインは、この条件を代表番号や0120番号も含めて満たすべき要件と整理しており、番号の変更や契約の変更があっても、常に発信元に着信できることが求められます。固定電話番号(0AB〜J)は、番号から地域が分かる地理的識別の役割が特に重視されます。
「他の利用者に対し、発信元を誤認させるおそれがない場合」には、1)代表者番号を送信する場合、2)0120番号等の着信課金といった特殊なサービスの電気通信番号を送信する場合及び3)その他のサービスについて、電気通信事業者が、電気通信番号の役割(地理的識別、品質識別、サービス形態の識別及び社会的信頼性の識別)の観点から、発信元を着信者に誤認させることのないよう措置し、かつ、発信者番号通知を受けた者が当該番号へ発信した場合に、発信元に着信することが確保されている場合等が該当する。
総務省「事業用電気通信設備規則第35条の2の6(異なる電気通信番号の送信の防止)のただし書に該当する場合について(取扱方針)」(2008年4月21日公表、2019年5月22日改定)
電気通信事業者協会(TCA)のガイドライン 第2版(2025年10月)
通信事業者でつくる一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)は、総務省の取扱い方針を、事業者が守るべき運用ルールとしてまとめたガイドラインを定めています。2025年に発信者番号を偽装した特殊詐欺が多発したことを受け、2008年の第1版を改定して第2版としました。
第2版は、総務大臣から番号の指定を受けた事業者だけでなく、その番号を使ってサービスを提供する再販事業者や、電話転送サービスの事業者を介した接続も対象に含めています。クラウドPBXのように番号を借りて電話サービスを提供する事業者にも、このルールに沿った運用が求められます。ガイドラインは、協会の会員かどうかにかかわらず、すべての電気通信事業者が最大限の努力をもって運用するべきだとしています。
再販事業者(音声サービスを再販するMVNO事業者やFVNO事業者を含む)、転送事業者を介した接続については、本ガイドラインの規定範囲となる。
電気通信事業者協会『異なる電気通信番号の送信の防止に係る省令の取り扱い方針』の運用に係るガイドライン 第2版(令和7年10月24日) 3.1
他社や他人の番号を発信者番号にできるか
本社や取引先の番号、別の通信会社で契約している番号を発信者番号として表示したい、というご相談をいただくことがあります。
ガイドラインでは、回線に割り当てられた番号と異なる番号を通知できるのは、ただし書きにあたる例外の場合に限られます。この例外の機能を提供するかどうかは、各事業者の任意とされています。
異なる電気通信番号の通知は、回線契約の名義が同一であるか、異なる名義の場合は当事者間の事前の了解があることを番号管理事業者および通知番号設定事業者が確認できる場合に限られる。
電気通信事業者協会 ガイドライン 第2版 4.3
発信者番号を設定・確認する通信事業者(ガイドラインでいう「通知番号設定事業者」)が、番号を管理する別の通信事業者の番号(他社で契約している番号など)を発信者番号として通知するには、ガイドラインに沿って、最低限、次の2つを定めておく必要があります。
通知した番号にかけ直すと常に発信元に着信することが条件なので、番号が解約・移転される前に、通知を止められる仕組みも欠かせません。また、不適切な番号の通知を防ぐ義務は通知番号設定事業者にあり、利用契約でお客様に転嫁することはできません。不適切な番号を検出したときは、発信を拒否する、非通知にする、正当性を保証できる番号に置き換える、のいずれかで対処します。
クラコールSIP trunk(AI・CPaaS BYOC を含む)では、クラコールが発信者番号を設定・確認する通信事業者です。クラコールで提供していない番号(他社で契約している番号など)は、現在、発信者番号として通知していません。番号を管理する通信事業者との契約がないまま、利用者が好きな番号を発信者番号に設定できるサービスは、受け手に発信元を誤認させるおそれがあります。
転送された電話の番号表示に注意が必要な理由
かかってきた電話を携帯電話などへ転送するとき、転送先にどの番号を表示するかはサービスによって異なります。通信事業者の網の中で転送するネットワーク転送では、転送前の呼の番号が引き継がれます。一方、利用者側の設備で電話を受けて、あらためて発信し直す端末転送では、発信し直す回線の番号が設定されるのが基本です。元の発信者の番号をそのまま表示できれば、転送先でも誰からの電話かがすぐ分かり、便利です。
ただし、端末転送で元の番号を表示しようとすると、転送する設備から見て、その番号は外から受け取った情報にすぎません。本当に元の着信があって転送された電話なのか、その番号が本物なのかを確かめられなければ、偽の番号をそのまま次へ送り出すことになります。
元の番号をそのまま表示する端末転送
偽の番号も、本物のように転送先へ届いてしまう
クラコールSIP trunkの場合
TCAのガイドライン第2版は、転送を、通信事業者の網の中で行うネットワーク転送と、利用者側の設備で行う端末転送に分けて整理しています。端末転送は第2版の適用範囲です。ネットワーク転送は、事業者間の接続を扱う別のガイドラインの範囲とされています。
「端末転送」は本ガイドラインの適用範囲である。端末回線の配下に設置された転送事業者の転送設備で転送される。
電気通信事業者協会 ガイドライン 第2版 3.2
また、特殊詐欺では電話転送サービスが悪用されることがあります。総務省は、警察の要請に基づいて、特殊詐欺に使われた固定電話番号の利用を事業者が止める仕組みを設けており、2023年には、電話転送サービス事業者が在庫として持つ番号をまとめて制限できるようにしました。
クラコールSIP trunkの取り組み
クラコールSIP trunkでは、適切な発信者番号が通知されるよう、次の方針で運用しています。AI音声エージェントやCPaaSと接続する「AI・CPaaS BYOC」も、クラコールSIP trunkの利用形態の一つとして、同じ方針で運用しています。
- 発信者番号の確認を徹底。すべての発信について、相手に通知する番号がクラコールでお客様に割り当てた番号であることを確認しています。AI・CPaaSから発信する場合も、クラコール側で発信者番号を確認します。
- クラコールで提供する番号のみを通知。クラコールで提供していない番号(他社で契約している番号など)や、他人の番号、任意の番号を発信者番号として通知する設定は提供していません。
- AI・CPaaS BYOCにも同じルールを適用。AI・CPaaS BYOCから発信する場合も、発信者番号がお客様に割り当てたクラコールの番号であることを確認しています。
- 転送時は元の発信者番号を通知しない。転送時に、元の発信者番号が正しい番号であることを確認できないため、元の番号をそのまま通知する転送には対応していません。
クラコールでは、ご契約いただいた電話番号のみを発信者番号として通知しています。そのため、転送時に元の発信者番号をそのまま通知できないなど、ご希望に添えない場合があります。
これは、発信者番号の偽装を防ぎ、電話を受ける方が安心して番号を確認できる環境を守るための取り組みです。
電話サービスを選ぶときの確認ポイント
クラウドPBXやIP電話を選ぶときは、料金や機能に加えて、次の点も確認しておくと安心です。
- 発信者番号を自由に設定できるとうたっていないか。他社の番号を通知できる場合は、その番号を管理する通信事業者と契約しているか、番号が正当であることをどう確かめているかを尋ねてみましょう。
- 転送時の番号表示の仕組みが説明されているか。元の発信者の番号を表示する場合は、その番号が本物かをどう確かめているかが大切です。
- 番号のお申し込み時に本人確認があるか。契約者を適切に確認・管理する仕組みも、安心して電話サービスを利用するための重要なポイントです。
- 電気通信事業者として登録・届出をしているか。登録番号や届出番号が公開されているかを確認しましょう。
お使いのサービスが法令やガイドラインに沿って運用されているか不明な場合は、サービスを提供する事業者に確認しましょう。
まとめ 番号を信頼できる電話サービスを選ぶ
発信者番号は、受け手が電話に出るかどうかを決める大切な情報です。通信事業者には、利用者に割り当てた番号と異なる番号を送らないことが求められています。2025年の事件を受けて、業界のガイドラインも改定されました。
クラコールSIP trunkは、AI・CPaaS BYOC を含め、お客様に割り当てた番号だけを発信者番号として通知します。発信者番号のルールに沿った電話回線をお探しの方は、お気軽にご相談ください。
参考資料
- e-Gov法令検索「事業用電気通信設備規則」(昭和60年郵政省令第30号)
- 総務省「事業用電気通信設備規則第35条の2の6(異なる電気通信番号の送信の防止)のただし書に該当する場合について(取扱方針)」(2019年5月22日改定)(PDF)
- 電気通信事業者協会「『異なる電気通信番号の送信の防止に係る省令の取り扱い方針』の運用に係るガイドライン 第2版」(PDF)
- 電気通信事業者協会「発信者電話番号が偽装されて着信する通話について」
- 電気通信事業者協会「実在する発信者番号を偽装した着信電話への対応について」(2025年3月25日)
- 総務省「電気通信事業者による特殊詐欺に利用された固定電話番号等の利用停止等スキームの改定」(2023年6月27日)
- 共同通信(nippon.com)「IP回線悪用で詐欺電話197万件」(2025年11月21日)


